作品や体験をレビューする際に点数で評価する、というしくみは最もスタンダードな手法としてあらゆるメディアに取り入れられている。これまで観てきた映画の感想を備忘録としてアプリを使って記録し続けてきたが、ある程度の数が蓄積されてきた時にこれまで記録してきた作品を振り返ると自分のなかで小さな破綻が起こっていることに気が付く。
「これとこれが同じ点数か…」
「こっちよりあっちの方が点が高いけど興奮度合い的に果たしてそうだったか?」
みたいに、その場その場で判定している点数の基準にブレが生じているのである。なぜ点数評価基準がブレるのか。間違いなくその時の気分が基準のベースを乱しているからだ。
ところが、この”気分”そのものを評価軸にすればいいのではないかと考えさせられた出来事が連続して起きた。
まずひとつ目がTwitterで紹介されているのを見つけた『aukana (アウカナ)』という作品検索アプリ。
自分が観た/観たい作品を記録としてレビューできるのだが、その評価の仕方がまさしく”気分”、感情で選択できるのである。実際にやってみた動画キャプチャーがこちら。
用意されている『作品を観たあとの気分』の中から複数選択して評価するシステムになっている。気分の選択後は任意でテキストも入力可能。個人的にはこの評価システムの方がブレないし、あとで振り返っても総覧しやすいのではないかと思う。何より自分の感覚なので自分にとってわかりやすければ良いのだ。『aukana』はそういった点で理に適ったアプリだと思ったので、レビューアプリを『aukana』に変えてみたところ。
もうひとつはLINE。まずはAndroidでの先行実装とのことだが、購入しているスタンプを”気分”ごとにカテゴライズすることができるというものである。スタンプを使っているユーザーなら周知の通り、スタンプは購入したセットごとに選択する方式となっており、購入しているスタンプ数が多くなるほど、リストの量は多くなる。
その従来の選択方法に加えて、購入したスタンプを横断して”気分”で分類してくれるのが『カテゴリータブ』の機能だ。リリースのイメージ画像を見る限り、おそらく当初は『うれしい』などいくつかの感情が用意されており、自動で振り分けられるのだろう。
個人的な予想ではあるが、おそらくこれは今後、”気分”を自分でオリジナルにカテゴライズできるのではないかと考えている。『aukana』もそうなるといいなと思っているが、感情表現には個人的な微妙な感覚値が潜んでいるからだ。
コンテンツの量は溢れ、いろんな情報を内包しているコンテンツを星5つで評価していくのは数が増えてくるとどうしても苦しくなるし、自分の評価軸もどこにあったのかわからなくなってくる。そこがそうそうブレないのが”気分”であり”感情”ではないだろうか。この評価システムはもっと広まってほしいところである。
だいぶ昔にデザインの専門誌かなにかでアートディレクター・クリエイティブディレクターである佐野研二郎さんが「フォントを探してそれを”かわいい”とか感情でフォルダ分けしている」という趣旨の発言をしているのを読んだことがあり、それはとても分かりやすいなあと印象深かったことを思い出した。現在だからこそ気分でコンテンツを評価するしくみはマッチしているのではないかと思うのである。
Thumbnail image from: https://twitter.com/aukana_official